毎年11月の酉の日になると、全国の神社やお寺で酉の市が開催されることはご存じですか?酉の市では多くの出店が営業し、とても賑やかな雰囲気になります。その酉の市の露店でよく売られているのが熊手。日ごろは落ち葉の清掃などに使われる熊手ですが、酉の市で売られているのは、華やかな装飾がたくさん付いた特別な熊手です。何故このように熊手が飾られているかというと、縁起ものとして売られているからです。今回は、熊手が縁起ものとして大切にされるようになった理由を詳しくご紹介するとともに、酉の市の由来、熊手の買い方、熊手の飾り方、古くなった熊手の処分方法など幅広くご説明します。
諸説ある酉の市の由来とは?
酉の市の由来は諸説ありますが、そもそも農民たちの収穫祭の一環として執り行われていたとする説が有力です。
収穫祭起源説
かつての酉の市では農機具や農作物、古着などを露店で取り扱っていました。何故かというと、そもそも酉の市は鶏を奉納するために訪れる人をターゲットにした市場だったからです。その中で販売されていた品物の一つに熊手がありました。本来、落ち葉をかき集めるための道具である熊手。そんな熊手を「運をかき込む」「金銀をかき集める」道具と銘打って販売する商売人が現れました。このような経緯で、世間一般でも「熊手」は縁起ものと認識されるようになっていったのです。
縁起が良いとされる七福神や大判小判、松竹梅などの飾り付けがされている熊手もありますが、これも商売人のしゃれっ気から産まれたアイディアです。実用性の高い道具である熊手がこのような形でよく売れるようになったという話は他の地域の商人にも広まり、真似をして売るようになりました。このようにして、装飾した熊手は縁起ものとして全国に広まっていったのです。
以上が、熊手が縁起ものとなった理由についての説の中でも有力な説です。その他にもいくつか別の説がありますので、ご紹介します。
「運をわしづかみにする」から来ているとする説
熊手は鷲の爪の形に似ているため、熊手は「運を鷲(わし)づかみにする力がある」ということで、縁起ものとなったとする説です。
武将の故事をルーツとする説
かつて武将が戦場に向かう際には軍扇を神仏に奉納する習慣がありました。そうすることで武運があがり、戦いに勝利できると信じられていたためです。激戦の末に勝ち戦で戻った時には、軍扇が骨だけになっていたこともあったそうです。その形が熊手に似ているということで、熊手は開運を招くお守りとして有名になり、縁起ものとされるようになったという説もあります。
酉の市での熊手の購入方法は? 値段の交渉が醍醐味!?
酉の市で熊手を購入する際には「粋な買い方」があることをご存じでしょうか?なんと熊手の価格を聞いた後、言い値で購入せず、値切り交渉するのが粋とされているのです。普段、縁起ものを値切ることはなかなかしないと思いますが、酉の市だけは別。もともと商売人が商売繁盛を願って購入していた熊手を買い求める際は、値切り交渉をして安く買うのが良しとされているのです。具体的な値切り交渉の手順は以下の通りです。
- 店主に熊手の価格を尋ねる
- 何度か値切り交渉をする
- 頃合いを見て「買った」と言う
- 値切る前の価格を支払い、お釣りはご祝儀として店主に渡す
- 手締めをする
値切り交渉の意味 三方良しの関係を築くこと
「せっかく値切りに成功したのに、結局、言い値で購入するの?」と疑問に思われる方もいるかもしれませんね。しかし、この一連の交渉の真の目的は、売り手と買い手双方が気分良く買いものをすることなので、これで良いのです。お客さんは店主にご祝儀を出せるほどのお大尽(お金持ち)になった気分を味わえますし、店主はご祝儀をもらったということで儲かったような気分になれます。さらに、そのやり取りを見ていた周囲の人も手締めに参加できてご機嫌になれるというわけで、いいことづくしです。このように、縁起ものを通してみんなが嬉しい関係を築くことが大切なのです。
ご利益が期待できる熊手の飾り方
このように気持ちのいい交渉をして購入した熊手は、ご利益の期待できる場所に飾るとなお良いでしょう。できれば玄関の入口に向けて、少し高いところに飾るのが良いとされています。飾る方角に関しては、縁起が良くないとされる北は避けたほうが良いでしょう。その年の吉方位に飾るのがおすすめと言われているので、参考にしてみてください。
古くなった熊手の処分方法は?
古くなった熊手は翌年の酉の市に持っていき、「熊手納め所」に返納しましょう。1年間福をかき集めてくれたことに対して感謝しながら返納すると良いですね。
酉の市に行けなかった場合は、年末年始、寺社に設置される「お札納め所」に返納しても大丈夫です。引っ越しなどで購入した寺社に納めることが困難な場合は、近くの神社でお焚き上げを行う際にお賽銭と一緒に納めることができる場合もあります。
まとめ
熊手のサイズは様々で、手のひらサイズのものから巨大なものまであります。最初は小さい熊手を購入し、毎年、前年より大きな熊手を購入していくのが理想と言われています。より大きな熊手の購入が難しい場合は、前年と同じサイズでも良いそうです。
酉の市に行けば、昔から変わらない商売人の活気を感じることができます。そして商売繁盛や金運アップの願いを込めて、熊手を購入してみると、さらに楽しいと思います。11月になったら酉の市に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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